こんにちは。
小学校教員をしている じねん(@jinen_ict)です。
この記事では、わたしの学校が指定校として取り組んでいる
リーディングDXスクール事業について紹介します。
この事業がどのような背景で始まったのか
何を目指しているのか
今どんな取り組みをしているのか
について、実際の取り組みや研修で学んだことをまとめています。
これからの教育にとって、大変意味のある事業なので、
現場でがんばっている全国の先生方にぜひ知っていただきたいです。
リーディングDXスクール事業とは
2019年末。
GIGAスクール構想が始まり、
突如として学校に配られた1人1台端末に
戸惑った先生も多いのではないでしょうか。
GIGAスクール構想は、社会の急速なデジタル化が背景にあり、
学校にICTを取り入れて、世の中の当たり前に追いつくために始まりました。
また、グローバル化や少子高齢化など、社会の変化は激しく、
これから先どうなっていくかわかりません。
そんな世の中を生きていく子どもたちには、
変化に対応できる力や、
自分で課題を見つけ、解決方法を考えていく力が必要とされています。
従来の「先生が教える」ことがメインの授業スタイルでは、
そのような力は身につかない。
だからこそ、
子ども主体の新しい授業スタイルを実現するために
1人1台端末が導入された。
というわけですね。
それから数年。
ICT活用が進んでいる学校と、そうでない学校で
格差が大きくなっています。
正直、わたしの市や学校でも、
ICT活用が十分進んでいるわけではありません。
2025年ごろには、端末の更新が考えられおり、
それまでにこの格差をなくし、
全国の学校でICTを「日常使い」できるようにしていこう!
という思いから始まったのが、
リーディングDXスクール事業です。
全国から約200校が指定校となり、ICT活用の推進を行っています。
活動は大きく分けて2つです。
1つ目は、活用が進んでいる学校の取り組みを学び、市や学校に広めることです。
研修会は、現地での研修とオンライン研修があり、
指定校の代表者が、これまでに何度も参加しています。
先日も別の記事で書いたように、大阪に行ってきました。
事業には予算が出ており、出張旅費などに使うことができます。
全国の活用を学びに行きやすくしてもらっているわけですね。
先進校の取り組みは大変参考になるので、
研修での学びはまた記事にしたいと思います。
2つ目は、指定校としての取り組みを、全国の学校に広めることです。
指定校は、今年度の自校での取り組みをまとめて報告し、
集まった実践事例を全校の学校に広めていくようです。
このように、指定校もそうでない学校も
それぞれレベルアップして、日常使いを進めていこう!というのが
リーディングDXスクール事業です。
これからの学校教育
では、これからの世の中を生きていく子どもたちのために
学校教育はどのように変わっていくべきなのでしょうか。
結論を言うと、今後求められるのは
一人ひとりの子どもを「主語」にした学校教育です。
つまり従来の一斉授業のような
「みんな同じ」からの脱却です。
これまでは、みんなと同じように行動できることが よし とされていました。
きまりを守り、先生の言うことに素直に従う子 = お利口さん です。
逆に、言うことを聞かない、周りに合わせられない子は、
問題児扱いされてきました。
それは、世の中が高度経済成長期で、
大規模な会社で働く「歯車」としての、
従順な人材が求められていたからですね。
それから失われた30年と言われている「平成」を経て、
世の中は大きく変わりました。
かつて、世界でもトップレベルだった日本の経済レベルは下がり、
今後はクリエイティブな力を持った人材が必要になってきました。
変化の激しい世の中では、言われたことに従順なだけではやっていけません。
自分の考えを持ち、仲間と協力して新しいものを創造する力。
今の子どもたちにはそんな力が求められています。
と言うことは、人材育成の場である学校がやり方を変えなければ、
そんな人材は育てられないというわけです。
自分考えたり、決めたりする力をつけるためには、
授業の中で自己決定の場面を増やしていかなければいけません。
教師がすべて「与えている」だけでは、
子どもはいつまでたっても「受け身」なままです。
・チャイムがなって、先生が来るまで何の学習をするのかわからない。
・めあてもまとめも教師が決めて、子どもはそれを写している。
・宿題は先生に出されたところを何も考えずにやっている。
ではいけないということです。
単線型 と 複線型
授業の流れには2種類あり、
従来のみんな「同じ」のスタイルが「単線型」
子ども一人ひとりによって進め方が違うのが「複線型」です。
単線型の授業では、教師が課題を提示し、みんなで同じ学習計画を立てます。
そして、全員が同じ進め方で学習を行います。
国語で例えるなら、
・今日はみんなで「第3場面」について考えよう。
・今から4人班で話し合いをしましょう。
・新出漢字の12番をやりましょう。
みたいな感じです。馴染みありますよね?
一方、複線型の授業では、その名の通りゴールまでの道筋が複数あります。
子どもたちはその時間、何をどう進めるのかを自分で決定します。
つまり、授業中にやっていることが1人ひとり違ってきます。
たとえば、
インターネットで調べ物をしている子もいれば
友達と相談して課題を進める子もいる
みたいな感じです。
「みんながバラバラのことやってたら管理できないやん!」
「誰が何やってるか把握しきれない!」
って思いますよね。
そこで活躍するのが ICT です。
どう使う?ICT
おそらく、多くの学校で行われているのが
「単線型」の授業にICTを使う場面を取り入れるという方法です。
・グループワークの中でオクリンクやロイロノートを使う
・資料の提示や資格支援として使う
などですね。
このような活用の仕方は、
従来の授業スタイルにICTをプラスする感じなので
比較的実践しやすいと思います。
ただ、上で述べたように、今後は「複線型」の授業づくりが必要です。
そこで活躍するのが、1人1台端末に標準搭載されている
共同編集をするためのアプリです。
うちの学校でいうと、「Teams」です。
「Teams」を使うことで、「Word」や「Excel」などを
複数人が同時に編集することができます。
この機能をうまく使うことで、
・教師は子どもたち1人ひとりの「めあて」や進捗を把握できる
・子どもたちは友達の考えをいつでも見ることができる
・グループで一緒に課題を進めることができる
・離れた場所でも一緒に学習できる
というメリットがあります。
リーディングDXスクール事業では、特別なアプリを使うのではなく、
端末の標準装備とクラウド環境をしっかり使いこなすこと
を目指しています。
ただ、急に明日から「複線型」の授業に
と言われても難しいですよね。
まずは「単線型」でのICT活用から始めて、
少しずつ(グラデーション的に)「複線型」へ移行
していく必要があります。
まずは教師のマインドチェンジ
先生方にとって、「複線型」の授業はこれまでに経験したことがなく
未知の授業スタイルです。
そんな状況で、いきなり「複線型」授業でのICT活用を……!
と言っても無理がありますよね。
なので、まずは教師自身がICTに慣れ、よさに気づくことが重要です。
たとえば、
・校務をクラウド化し、資料のやり取りや共同編集を体験する。
・研修をこれまでの「講義」スタイルから、アウトプット中心に変える。
などができると思います。(詳細は後述)
そういう経験を先生方が積み重ねることで
「ICTってわからん、難しい、どう使うねん……。」から
「ICTって便利!楽しい!こんなことに使えそう!」に
マインドチェンジしていくことが大切です。
そのためには、ICT担当の教員や、教育委員会が主導となって、実践紹介や研修を進めていく必要があります。
具体的な取り組み
リーディングDXスクール事業を受けるにあたり、これまで担任(情報主任)だったわたしは
今年から教務&校内研究主任(情報主任)になりました。
この比較的自由に動きやすい立場から、4つの取り組みを進めています。
1. 授業でのICT活用支援
1つ目が、先生方の「授業支援」です。
自分のクラスがなくなったので、校内のさまざまなクラスに入って
ICT活用のサポートを行っています。
先生方にICTのよさを体感してもらうことを念頭に置き、
その先生のスキルやニーズ、クラスの実態に合わせた活用の提案なども行っています。
「先生が一緒に授業に入ってくれるから安心して使える」
と言ってもらえています。(安心感って大事。)
2. 新しい研修スタイル
2つ目が、上でも例に挙げた「研修スタイルの変更」です。
校内研究では、これまで紙と模造紙で行っていた授業研究会を
クラウド上の共同編集で行うようにしました。
7月に行った研究会では、とっつきやすさを重視して
Padletを用いて意見の交流をしました。
研究会の振り返り&授業者へのメッセージは、
Teamsに投稿し、いつでも誰でも見られるようにしています。
夏休みに行う全員研修では、Teamsを用いた共同編集の体験をしてもらおうと
考えています。(後日記事にします。)
このような先生方へのアプローチを積み重ねることで、
マインドチェンジをしてもらおう!というわけです。
3. 校務のクラウド化による業務改善
3つ目が、これまた上述の「校務のクラウド化」です。
紙の配布物は学校ホームページに掲載して配布をやめたり、
会議の資料や指導案をTeamsで共有したりしています。
夏休みの選択課題(図工の作品や作文)も
要項と応募票をホームページ掲載に変え、
「夏休み前の袋詰めがずいぶん楽になった!」と
担任の先生方からも好評です。
こういった「よさ・便利さ」を肌で感じてもらうことが重要だと思っています。
4. ICTカフェの運営
そして、4つ目が「ICTカフェ」です。
・ほかの先生がどんなICT活用をしているかわからない
・使いたいけど、どう使っていいかわからない
と言った声に応えるべく、放課後に校内の希望者で集まって
プチ研修のようなおしゃべりの場を設けています。
お菓子や飲み物も用意して、和気あいあいとやっています。
また、市内の先生方ともつながるべく、
Teamsのビデオ通話機能を使ってオンラインで話す場も設定しています。
どちらもまだ始めたばかりですが、少しずつ参加者が増え、
先生同士の輪が広がっているところです。
今後もICT活用の「見える化」を進めていきます。
まとめ
以上が、リーディングDXスクール事業でわたしの学校が行っている取り組みです。
やろうと思えばどこの学校でもできることばかりではないでしょうか。
大事なのは、
まず教師自身が「マインドチェンジ」をすること。
その上で、
授業を少しずつ「複線型」に変えていくこと。
そしてなにより、
目の前の子どもたちに「これから必要な力」をつけることです。
きっと、もっと高度な取り組みをしている先生もいらっしゃると思います。
一方で、同じように悩んだり、困ったりしている先生もいらっしゃいますよね。
このブログやTwitter(@jinen_ict)を通して、
全国の先生方ともっとつながりたいと思っています。
ぜひ、どんどん関わって、みなさんと情報共有していきたいです。
これからよろしくお願いします!
最後まで読んでくださってありがとうございます。
お疲れ様でした!