「よし!まずは初発の感想を書かせて……」
みんな当たり前にやっている国語授業の「常識」
それって本当にベストな方法ですか?
こんにちは。
小学校教員の じねん(@jinen_ict)です。
この記事では、書籍
『国語授業の「常識」を疑え!』著:土居正博
を読んで学んだことを、小学校の教員目線でまとめています。
・新出漢字はドリルだけでなくノートに何度も練習
・音読はカードを渡して家で練習
・体育では準備体操をはじめにみんなで
・九九は2の段と5の段から
・掃除は当番を決めて取り組む
などなど
学校現場には、さまざまな「常識」が存在してます。
もちろん、地域や学校によって違うとは思いますが、
少なからずみなさんの学校でも
無意識に「これはこうするもの」としてやっていることが
あるのではないでしょうか。
この本は、国語科のスペシャリストである土居正博先生が
国語科の「常識」を疑い、乗り越えてきた方法やその考え方を学ぶことができます。
・国語の授業に自信がない
・「常識」にとらわれない授業づくりがしたい
・自分の中の「常識」を見直したい
そんな先生方におすすめです。
「常識」はなぜ「常識」なのか
冒頭にも書いた、「初発の感想を書かせる」などといった「常識」は
なぜ「常識」になったのでしょうか。
それは、「常識」が持続可能で、一定の効果があるからです。
漢字ドリルとノートを買って練習させるのは、教師が管理しやすく、一年を通して宿題などでそれを続けることができるからですよね。そして、(ある程度の)子どもたちもたちはそのやり方で漢字を覚えることができます。
なんのメリットもなければ、「常識」として定着しません。
しかし、「常識」には良さがある一方で、限界や危険性もあります。
持続可能ということは、手法が定着すれば楽である反面、教師も子どもも思考停止を招くという危険性があります。
漢字の例でいうと、
先生は思考停止で漢字を宿題に出し、子どもたちも思考停止でそれを書く。
次の日に小テストをすると、できる子はできるし、できない子は全然できない。
なんてことが、よくありませんか?(体験談)
漢字を覚えることではなく、「漢字を10回書くこと」や「ノートを字で埋めること」が目的になってしまうと、あまり意味がありませんよね。そのやり方でも覚えられる子はいるでしょうが、漢字が定着する子は一部だけという限界もあります。
このように、一定の効果があり、持続可能である「常識」は、他にもたくさんあります。
それらを何の疑いもなしに「そのまま」やっていては、目の前の子どもたちの力を十分に伸ばせないかもしれません。大切なのは、「これって本当にベストな方法かな?」と疑うことだと筆者は言います。
「常識」の疑い方
では、どのように「常識」を疑えばよいのでしょうか。
常識を疑う第一歩は、
自分の実践 = 常識(またはそれに影響されているもの)
と気づくことです。
漢字の教え方など、初任者や若手の頃に先輩から教わったことをそのまま
あるいは少しアレンジしてやっている
なんてことがよくあると思います。
自分が普段やっている実践について、
立ち止まって少し考えてみるとよいでしょう。
大切なのは、その実践が目の前の子どもたちにフィットしているかどうかです。
目の前の子どもたちは、意欲的に取り組んでいるか。
その取り組みは、本当に成果が出ているか。
といった子どもの姿(実態)をもとに、よい実践かどうかを考える必要があります。
また、つけたい力やゴールを明確にし、なんのためにやっているかを考えることも大切です。
先ほどの漢字の例では、漢字を覚えることが「目的」であり、ノートに書くことは「手段」のはずです。
「目的」=「手段」になっていないかという点も考えるべきポイントです。
自分が受けてきた教育や、先輩から教わった実践を、なんとなくそのままするといった
常識の再生産には意味がありません。
自分の実践を見つめ返し、「常識」にとらわれずに、
目の前の子どもたちに合わせて改善を重ねていくことが
教師の役割であると筆者は言います。
乗り越えるべき「常識」たち
では、具体的に、どんな「常識」をどのように乗り越えていくべきなのか、
自分が「確かに!」と思ったものを
常識…【Before】 筆者の提案(乗り越え方)…【After】
という形式で、いくつか紹介します。
【Before】初発の感想を書かせる
冒頭にも書きましたが、これってわたしも含め、多くの先生がやりがちじゃないでしょうか。
初発の感想から「問い」を考え、単元計画を作るというのが一般的な流れだと思います。
しかし、実際問題、初めて読んでいきなり感想を書くのって、大人でも難しいですよね。
子どもにとっては尚更難しく、よっぽど賢い子でもない限り、いきなり深い問いは出てこないでしょう。
とりあえず書かせたものの、その後につながらないのであれば、意味がありません。
【After】初読では「あらすじ」を書かせる
そこで筆者が提案してるのが「あらすじ」を書くことです。
いきなり感想を持つことは難しくても、
あらすじなら、初読で大まかなストーリーが分かれば書くことができます。
あらすじを書くことで、一人ひとりの読みの違いが明確になります。
「ごんぎつね」を例に挙げると、
「ごんが、〇〇した話。」と書く子もいれば、「兵十が、〇〇した話。」と書く子もいるでしょう。
子どもたちの捉え方の違いが分かることで、その後どう読みを進めていくか
という「問い」を子どもたちと共有しやすくなります。
余談ですが、
クラウド上での共同編集を用いれば、全員の「あらすじ」を瞬時に共有できますね。
意見の根拠を問う
「根拠」というのは、客観的事実で、国語では本文の「叙述」がそれに当たります。
子どもたちが意見を言う際に、
「それってどこに書いてあった?」と聞きますよね。
子どもたちは
「○ページの○行目に書いてあります。」
と答えるでしょう。
もちろん、意見の根拠を見つけられることも大切ですが、
それだけでは本当の意味で思考力は身につかないと筆者は言います。
【After】根拠+意見の理由付けを問う
「理由付け」とは、その根拠がなぜ、自分の主張を支えるのかを自分なりに説明することです。
つまり、どこに書いてあるかだけでなく、「〇〇と書いてあるから、△△だと思う。」というところまで言うということです。
自分なりの理由をわかりやすく説明する経験を通して、思考力や表現力が身につきます。
これは、すぐにできることではなく、教師の投げかけや、日々の積み重ねが重要ですが、
国語の学習を深める上では重要だなと感じました。
【Before】「気持ち」ばかり話し合う
これもやりがちだな〜と自分で反省しました。
登場人物の「気持ち」を考えることは重要ですが、
そればっかりだと、正直面白くありません。
しんどい子にとってはずっとしんどいですし
できる子にとっては「また気持ちか…」という状態になります。
【After】正解のある論理的なことも話し合う
いつもいつも「気持ち」ばっかり考えるのではなく、
時には正解のあることについて子どもたちに考えさせることで、
授業にメリハリができます。
思考停止で「気持ち」ばかり聞くのではなく、
なぜ「気持ち」を考えるのか、
今何を問うべきか
必然性と目的意識を常に持って、授業を組み立てることが重要です。
【Before】音読は家でさせる
音読カードを配布し、毎日の宿題として出す。
よくやりますよね。わたしもやっていました。
やりながら、「これって意味あるのかな?」と思いつつ
「まあでも繰り返しやれば訓練になるか」と自分に言い聞かせていました。
しかし、これって「やらせて」はいますが、「指導」はできていないですよね。
また、「家でやってこい」だけでは、子どものやる気が出るはずはありません。
【After】音読は教室で教師がきっちり指導する
家でやらせるだけの方が、教師は「楽」です。
しかし、なんとなくやらせているだけでは力がつきませんし、
力がついたかどうかを教師は見取ることができません。
子どもたちの音読する力を伸ばすためには、一人ひとりの音読を聞くことがスタートになります。そこから個別に評価をし、力を伸ばしていくことが重要です。
筆者は、子どもたち一人ひとりの音読を聞き、厳しく評価をするそうです。
教師がしっかりと評価する場を持つことが、子どもたちにとっては成果を発表する機会を持つことになります。その結果、どのように読めたらよいのかが共通理解でき、家での取り組み姿勢も変わってくるそうです。
正直、音読を聞く時間の抽出が難しそうですが、宿題に丸投げではいけないので、1日に数人ずつ分けて聞くなど工夫して取り組みたいと思いました。
【Before】習っていない漢字は使わせない
これについても、よくよく考えれば「なんで?」という感じですが、「常識」として広まっているのではないでしょうか。
書き順などを間違えて覚えるといけないから
という一見「子どものため」のような理由が予想されますが、
実際のところは
「自分が指導していないところを勝手にやられるのが嫌だ」
という教師のエゴが存在しているのでは…と筆者は言います。
教師はついつい自分の手中に子どもたちを入れておきたいと思いがちですよね。
しかし、これは本当に「子どものため」になっているでしょうか。
【After】習っていない漢字もどんどん使わせる
習っているかどうかが基準になると、子どもたちはいつまでも「受動的」なままです。
子どものためを思うのであれば、「習ってないけど書いてみたい!」「書けそう!」という主体的な気持ちを大切にするべきです。
もちろん、間違っている場合はしっかり直す必要はありますが、習っていなくてもどんどん書かせることが子どもたちのやる気にもつながります。
「習ってないけど書けたよ!」って、子どもたちにとってはとても嬉しいことですよね。
特に低学年の子たちは見ていてそう思います。
また、小テストなどでは習ってない字が正しく書けていたら+1点などの工夫(加点方式)をすると、子どもたちはどんどん漢字を覚えたくなると筆者は言います。
まとめ
国語科に限らず、学校現場にはさまざまな「常識」が存在しています。
それらはよさもありますが、目の前の子どもたちにフィットしていなければ
柔軟に変えていく必要があります。
あくまで、「子どものためになるかどうか」という軸をぶれさせずに
実践を日々ブラッシュアップしていくことが大切だと学ぶことができた本でした。
まさに、今子どもたちに求められている「批判的思考力」が教師も必要ですね。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
お疲れ様でした。